『メモリーズオフ』20周年イベントで浄化された話をする

ここはおれのブログなので、今回も多くの人に理解されないで自分勝手極まりない話をオタクの特殊能力である読みにくい長文で書いていく。

おれはギャルゲー『メモリーズオフ』が大好きなので、当然20周年記念イベント(延期されたので実際はシリーズ21周年)を観た。20年以上同じギャルゲーが好きというとやべえ奴に見えるかもしれないが、このゲームにはなかなか離れがたい魅力がある。正直10代の頃のように、ギャルゲーのキャラやストーリーに萌えるのは難しくなってきているのをひしひしと感じるものの、この『メモオフ』に関してはおかしいくらいにシリーズファンを大事にしている節があり、それならおれも追い続けなければならないという謎の使命感を持っている。みんなも『メモオフ』村に入らないかい?

メモオフ』は、現在ナンバリングタイトルとしてリリースされている作品群は単体でも楽しめる。そのうえで、過去作を遊んだ人にだけわかるリンクのようなものも散りばめられているし、長年ファンをやっている人にはたまらないリアルイベントなんかも積極的すぎるくらいに行っている。
一時期続編が途絶えたこともあった。2018年には『Memories Off -Innocent Fille-』が発売され、リアルイベントとして”卒業式”が行われた。そのファンディスクに合わせて”謝恩会”、そして過去作をまとめた『メモリーズオフヒストリア』の発売を記念して”成人式”をやったりと、その勢いを取り戻しつつある。もうここまできたら『メモオフ』老人会までやってもらっても私は一向に構わんッッ!

メモオフ』20周年イベントはもともと、ゲームの限定版の特典として開催されるはずだったものだ。現在のコロナ禍の影響を受けて延期になり、ようやく開催にこぎつけたのが夏の9月11日。正直行くかどうかギリギリまで迷っていたが、急遽生放送での配信も決定したので、今回は家から鑑賞することにした。そしてこのイベントがおれにとってあまりにも最高のものだったので感激のあまりブログを書き始めた。

本イベントのメインは、アーティストによるシリーズ主題歌の歌唱と、声優陣による朗読劇である。この手のギャルゲーイベントではよく見る構成だったが、この20周年イベントのものは格別に良かった。主題歌の歌唱の多くは生バンドやストリングスをステージに入れた豪華なもので、CD音源はもちろん、カラオケ音源を超えた迫力が生放送でも伝わってきた。そして朗読劇は、シリーズキャラクターの「その後」を描くものになっており、そのシナリオの内容が「このイベントはもしかしたらおれのために開催されたのでは」と思うほどに最高のものであった。そんなはずは絶対にないんだけれど、おれはその朗読劇を聞いた瞬間に興奮で胸がいっぱいになったのだ。

先述したように、『メモオフ』シリーズのナンバリング作品は単体で1つの作品として設計されている。どのナンバリングから遊んでも、物語を楽しめるようになっているのだ。しかし、シリーズを遊んだ人ならわかるように『メモオフ』シリーズの作品の多くは同じ時間軸のうえに乗っており、作品によっては過去のキャラクターがゲスト的に顔を出すこともある。この仕組みは素晴らしいファンサービスではあるのだが、おれは猛烈にこじらせたオタクなので、ゲーム内の”正史”が確定することを常に恐れてきた。
メモオフ』は、任意のヒロインを攻略できるタイプのギャルゲーである。作品によってはメインヒロイン的な人がいるものの、プレイヤー側としては好きなヒロインとのエンディングこそがその作品の結末であると捉えられるようにできている。一応すべてのルートは見るもの、思い出の中に残すのは自分の一番好きなヒロインなのである。しかし、その後の作品で、主人公のその後が描かれてしまうと、どのヒロインとくっついたかが明らかになってしまうケースがある。こうなってくると、プレイヤー側が強烈な思い込みの力で定めていた”正史”が歪み始める。
メモオフ』においてもゲーム内の描写で、過去作の主人公がどのヒロインと結ばれたかが描かれている。しかし、本作の開発者はユーザー思いで優しすぎるので、「ゲームで描かれたものが正史ではありません」と明確にインタビューなどでも発信してくれたりした。これは本当にありがたいことだ。しかしおれはこじらせすぎたオタクなので、そうは言われても「つらいものはつらい」みたいな感覚も持っていた。ウルトラ自分勝手な話ではあるのだがおれは『メモリーズオフ6 〜T-wave〜』に出てくる遠峯りりす(CV.新名彩乃さん)ちゃんというキャラが登場した瞬間から大好きであり、俺の中ではこのヒロイン以外を選ぶ結末はありえないと思っている。このキャラが好きすぎて、ドリームパーティというイベントや東京ゲームショウで手から流血しながらガチャを100回以上回したこともあるし、なんならグッズもほとんど持ってるし、新名彩乃さんのサインが入ったCDも引っ越しを繰り返しても飾り続けている。そのうえおれ自身がこのゲームのファンブックを作りたいけどもう発売されていたので、『メモリーズオフ ゆびきりの記憶』のファンブック制作に猛烈に志願したりした。

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▲若かりし頃、左下にあるMP3プレイヤー欲しさに、リアルガチャを400回くらい回した。

しかし……だ。本作には嘉神川クロエ(CV後藤邑子さん)という、めちゃくちゃ人気のあるヒロインが登場しており、後の作品ではその人気を受けて、主人公とくっついたのもクロエみたいな描写が登場するようになった。シリーズ最新作の『メモリーズオフ -Innocent Fille-』でりりすは少し出てきたけれど、クロエ先輩がメインヒロインであったのだという思いは消えることはなかった。もうちょっとりりすにスポットを当ててくれと願ってはいたが、難しいだろうともわかっていた。

メモオフ20周年イベント』のゲスト発表を見て心底驚いた。なんと、遠峯りりすの声優を務めた新名彩乃さんが登壇するという情報が公開されたのだ。マジで「ウオオオオオオー」とここ数年ないくらいテンションが上がった。この時うすうすおれは「このイベントはおれのために開催されているのかもしれない……」と感じたのだが、朗読劇を聞いて「おれのために開催されている」という確信めいたものを感じ、『メモオフ』愛が過去の50億倍くらいに膨れ上がっている。ありがとうすべてのメモリーズオフ

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朗読劇に登壇したのは、嘉神川クロエ役の後藤邑子さんと、遠峯りりす役の新名彩乃さん。ネタバレを伏せるために詳細は避けるが、おおまかな内容は「クロエと結ばれた未来もあれば、りりすと結ばれた未来もあるという、パラレルワールドの可能性を示唆するもの」だった。ちょっと油断して聞くとりりすとクロエのやりとりが「どっちも主人公と結ばれたと勘違いしている痛い人たち」に見えるのだが、『シュタインズ・ゲート』をやっている鍛えられたオタクであるおれはその意味をただちに察した。
メモオフ』は本当にファンを大事にしている。イベントやアフターストーリー、グッズ展開でいろいろなキャラクターを出そうという試みの中で、ついに遠峯りりすの出番がやってきたというだけなのかもしれないが、おれの理想と公式として発信された朗読劇がかみ合った瞬間、自分の中に貼り付いていた”正史”へのコンプレックスが粉々に砕け。今はもう『メモオフ』信者として一段階段を登り、完全に澄んだ心で本作を応援している。しかもだよ、イベントではキャラソン(キャラクターソング)パートまで用意されており、新名彩乃さんが遠峯りりすのキャラソンを熱唱してくれるとかいうご褒美までついていて、おれはもう完全に昇天しそうだった。これは『メモオフOTAKUならわかると思うのだが、こういうイベントでキャラソンが聞ける機会というのはかなりレアで、しかも『メモリーズオフ6 〜T-wave〜』となるとなおさらなんだよ。10年前『メモリーズオフ6 〜T-wave〜』のイベントでは、平野綾さんや後藤邑子さんと一緒に登壇した新名彩乃さんがキャラソンを歌っているのを見たときになんか得も言われぬ感動があったんだよな……とか、見たことはないけれど走馬灯のように昔のことを思い出した。

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もちろん、アーティストの方々の主題歌歌唱や、歴代声優によるほかの朗読劇もとても良かった。そのどれもが、『メモオフ』ファンに刺さるものであり、中にはおれのようにピンポイントで幸せなものにぶちあたりくらくらしている人もいると思う。
これから発売される新作『シンスメモリーズ』のパートもじんときた。どんなゲームかまだわからないのに、その主題歌と挿入歌、そして片鱗を見せるドラマパートでなんか神ゲーっぽいオーラを感じた。大山優梨子というキャラクターの声優を務める声優の岡本美歌さんの歌唱なんかはめちゃくちゃに『メモオフ』的な泣かせるエモさがあり、おれはこのヒロインを特に推していくことにした。

イベントを経て、オタクとして完全に浄化された状態で思うのは、『メモオフ』が続いてくれてよかったということに尽きる。好きなヒロインにスポットが当たる瞬間を観れたのは、『メモオフ』が6で終わらず20周年を超えてもまだ続こうとする作品のエネルギーがあるからにほかならない。どこかで終わっていたら、こんな機会は訪れなかっっただろう。20年以上『メモオフ』が好きと思いながら本作を追いかけてきた。追いかけ続けられるものがあるのは幸せなことで、追いかけ続けていれば今回のようにたまらない瞬間が訪れることもある。

ますます『メモオフ』シリーズには続いてもらいたいし、今週発売の『シンスメモリーズ 星天の下で』も多くの人に遊んでもらいたい。ナンバリングタイトルではないのだが、『メモオフ』スタッフが制作する最新作で、公式サイトにもシリーズのエッセンスが凝縮されている旨が書かれている。この作品でまだ『メモオフ』が求められるのであれば、シリーズの先の未来もあるだろう。

youtu.be

筆者は『メモオフ』シリーズそのものも好きだが、作品やイベントなどから漏れ出す制作陣の熱量も大好きである。実はこのシリーズ、1作目から現在に至るまで、制作陣がまるっと変わったことはない。参加するクリエイターは合間で入れ替わっているが、入れ替わったとしても完全に離れるということは珍しく、ゲストとして新規イラストなどを提供していたりする。シリーズが継続しているのは、熱意ある制作陣のおかげといってもいい。ファンのおかげでもあるけれど、おそらくこの開発陣でなければ続いていないという出来事もたくさんあったのだ。

メモリーズオフ』シリーズの歩みは常に順調というわけではなかった。よく知られている話としては、まず初期作品の開発元だった株式会社KIDは倒産し、本作の権利はサイバーフロント社に移った。そこからKIDのメンバーが数多く在籍するMAGES.が権利を入手するまでに紆余曲折あったという。このどこかのタイミングで開発側が、権利関係が大変だからと続編の制作を見送っていたら『メモオフ』の今はないだろう。
そして権利がMAGES.に移ったあとも、シリーズとして順調だったかというとそうではない。まず、新作の発売は2010年を境に一度ストップしている。一度2013年のイベントで”開発中の新作”ということで新作のグラフィックがお披露目されたが、そこから音沙汰がないまま数年が過ぎた。発表された作品の音沙汰がないことはゲームというエンタメ分野において多々あるが、あまりに長い沈黙期間から『メモオフ』シリーズの終わりを感じたファンもいたはずだ。後に明かされた話では、実はこの沈黙期間は、ギャルゲーが売上的に厳しいのではという会社的な判断があり、一度開発が凍結したことで生じたものだという。しかし、『メモオフ』の制作陣はこの期間も諦めずに新作開発のタイミングを待っていた。売り上げを伸ばす方法を模索しつつ、いつでも制作を再開できるように構えていた。
その諦めなかった制作陣の手によって、2018年には『メモリーズオフ -Innocent Fille-』が発売された。2013年に発表された要素を活かしつつ、新しいプロジェクトとして再起し、開発へと漕ぎつけたのだ。ただし、この作品には”ラストメモリーズ”というキャッチフレーズが使われ、公式のリアルイベントとして”卒業式”も行われた。新作の発売とはなったものの、依然としてコンシューマー向けのギャルゲーが継続することは厳しい状況だったのだろう。ファンとしては、『メモリーズオフ -Innocent Fille-』とリアルイベントは、『メモオフ』制作陣がファンのために用意してくれた別れの機会なのだと思った。今風に言うのなら、「さらば、すべての『メモリーズオフ』」というやつであろうか。

しかし、卒業式では「ファンディスクをやりたい」という発言が飛び出し、別れは2019年のファンディスク『Memories Off -Innocent Fille- for Dearest』へと持ち越された。この作品のリアルイベントとしては”謝恩会”が行われた。実は筆者はこの作品の超限定版の付録冊子に収録されたインタビューを担当したのだが、そこで市川シリーズプロデューサー以下のような発言があった。

Q:『メモオフ』は今後どうなるのでしょう?

市川:実は、会社的には「やったほうがいいんじゃないか」とは言われています。
ただ、これだけラストメモリーズと言っていて、ファンディスクも出して、卒業式も謝恩会もして、直後に新作だーというのは格好悪いじゃないですか。閉店セールみたいになるのは違う気もするので、ちょっと時間を置くか、世界設定はそのままで、『メモオフ』とは名のつかないものを作ってみるとかでしょうか。ただ、『メモオフ』だからいいという方もいるんですよね。うーん、 難しい……。

つまり、2018年に発売に漕ぎつけた作品の売り上げが続編制作のハードルとならないくらいには好調であり、会社的にもシリーズにポジティブな目を向けてもらえているということだったのだろう。

プロデューサーの発言のとおり、過去作を最新ハード向けにまとめた『メモリーズオフヒストリア』の発売と同時に、最新作である『シンスメモリーズ』”が発表された。シリーズ20周年記念イベントの開催も決定。プロデューサーの言う通り、作品の流れだけを追いかけると閉店セールのように見えるかもしれないが、最近は開発陣もファンも本当に”終わり”を感じていたと思う。それが新作まで出すというのだから、応援せざるを得ない。

 

過去の『メモオフ』インタビューでもうひとつ強く覚えている言葉がある。シリーズの続編を出せるのは売上次第であるという大前提のあとに、制作陣は以下のようなことを語ってくれた。

ファンの皆様が応援してくれたから、諦めずに続編を作ろうと思い続けられた。

そして、ファンの応援というのは、こちらが思った以上の形で開発サイドに届いているという話を聞かせてもらった。アンケートなどはもちろん、SNSでの反応なども追いかけているらしい。本人が”小さな発信”と思っていても、大きな意味があったりする。全てのゲーム開発陣がとは言えないが、少なくとも『メモオフ』開発陣はそうなのだ。皆様もなんらかの『メモオフ』シリーズを遊んだら、その感想などを発信してみてはいかがだろうか。その発信がシリーズの原動力になる可能性は大いにある。


というわけで、おれは『シンメモ』を推していく!
このブログはオタクの怪文書なので、もう少しまともな記事をどこかで書く。
メモオフ』が一切わからないという方は、過去作のナンバリングを振り返れる『メモリーズオフヒストリア』(PS4/Switch)をぜひ遊んでください。