浅葉のワーフリ日誌38:220はCeremony

2024年2月20日
『ワールドフリッパー』サービス終了の日が訪れてしまった。

おれたち限界ワーフリ部は、昨年の5月に運営体制の縮小が発表された頃に「サービス終了の瞬間はワーフリの舞台のひとつである渋谷に集まろう」、「ソシャゲ葬だな」みたいなことを冗談交じりに言い合っていた。まあいうて平日ですし。そんな日にアラフォーの大人たちが集まるなんてないんだろうけどとか思いながら。

しかし蓋を開けてみると運営縮小とはいえ、本作のラストランは実にパワフルだった。エンディング後のストーリーイベントを実施し、誰もがサービス終了を確信しているのに次々と新キャラクターを投入してくる。新キャラクターたちにボイスはなかったが、しっかりと個別に物語が用意されているのには驚いた。まだまだ見せられる世界はあったんだぜと言わんばかりだ。なぜかよりプレイが快適になる機能改修とかもしている。そんな運営に背中を押され、おれたちは最後のガチャまで課金を続け、次々と復刻するイベントを走りまくり2月を迎えていた。そしてこの頃には、冗談で言っていた別れの儀式が現実へと変わりつつあった。

「これやっぱ2月20日に渋谷集まるしかねえな」、「でもあんた徳島から来るの?そもそもその日は平日だが………」、「冠婚葬祭みたいなもんだし休みだろこれは」、「マジかよ……。じゃあおれも休むか」、「おれも行くわ」、「行きます」。

限界ワーフリ部は全員が狂っていた。
なぜか「ワーフリはやってないですけど、様子を見に行きますわ」とかいってフルサイズミラーレスを持った記録係まで現れることになった。

2月20日は半袖でいられるような気温になった。
冬の暑い日にワーフリをみんなで弔ったよなあなんて言えるようにゲームの神が計らってくれたのかもしれない。渋谷駅ハチ公口に集まって開口一番「ところで葬儀って何やるんだ?」。「いやノリできたからよくわかんねえ」、「とりあえず飲むか。で、ワーフリの思い出話でもしようぜ」無計画無軌道な別れの儀式が始まった。飲むだけなのもなあということで、ワーフリの舞台である渋谷を一望できる展望台・SHIBUYA SKYに立ち寄ろうとしたが、今日の分も明日の分も予約受け付けは終了しているという。計画性ゼロの出だしは好調。朝から空いている飲み屋ももちろん少なかった。ぐるぐると渋谷の街を歩きながら、空いている飲み屋に飛び込んだ。

 

おれたちはアルコールを頼み、ワーフリの話を始めた。サービス開始直後に素晴らしいセールスランキングでスタートダッシュを切ったこと。ドット調でクラシカルなゲームかと思いきや、描くストーリーや世界、ゲームシステムまでもが新規性に満ちていたこと。これは覇権になるとか騒いでいたら、風ナーフと呼ばれる大きな失速事故があったこと。正直あのときはちょっとやる気なくしたよなあ。でも追加されるキャラクターやストーリーで魅力的で、なんかやめられずずるずる続けてしまったこと。気がついたらまたすさまじい熱量で取り組んでいたこと。限定キャラクターを中心とした特攻編成の構築難度の高さゆえに、あのキャラいなくてきつかったなあーとかも話した。限定はもう全部引くしかないと謎の覚悟を決めたりもした。飲み屋に入ってからおよそ2時間くらい。終わりを迎えるソシャゲを褒めたり、ときにはあれはねえよなあーと貶したり、いろいろな角度から語っていく。おれたちの目から見たワーフリの姿が、言葉で語り合うことでシャープに削り出されていく。LINEでバチバチとガチャ煽りをぶつけあっていたのに、こうして集まって喋るのは本当に久しぶりだ。

サービス終了の鐘が鳴る12時が間近に迫り、誰からともなく話をいい方向にまとめようとポジティブな話を始めた。「まあよくやったよなあー、いろいろあったけど、シナリオ最後まで描き切ったのすごいよ。きれいな終わり方なんじゃないの」とか、「途中で終わるソシャゲも多いもんなあ。ありがてえよ」。

 

「大往生や大往生。サイゲとシテイルに感謝!乾杯!」とかなんとかいって、何度目かの乾杯をして、ワハハと笑った次の瞬間だった。「でも、終わるの寂しいっすよ」と仲間の一人がぼそりと言った。ほかの仲間も気づいたのか、一瞬の沈黙があった。おれはこのとき、しみじみと、そうだよなと心の中で同意した。みんなはどうだっただろう。きっと、似たような気持ちだったんじゃないだろうか。誰もその言葉を笑い飛ばしはしなかったから。

弔いだとか葬式だとかいって、理由をつけて集まりたかった。
『ワールドフリッパー』が終わるのは寂しい。ガチャ煽り、マウント、ろくな遊び方じゃなかったはずなんだけど、4年間も続けられたのはこのゲームの持つ力だろう。

これまでさまざまなソシャゲを遊び、アプリのセールスランキングをチェックしては、もうサービス終了しそうだから課金したくねえなあ。遊ぶのももうやめとくかみたいなゲームもたくさんあった。プレイしないための理由を見つけてしまったとき、もうそのソシャゲとの関係は破綻している。でもなぜかワーフリだけは、サービス終了の予報が流れても遊び続けられたし、課金もぶちこんでいた。サービス終了が決まってるガチャに天井まで課金することはもうこの先ないだろう。良いところばかりではなかったけど、悪いことよりも良いことのほうが何倍も多かった。

サービスが終了する理由の分析をしたいとは思わない。
どうすれば続いたか考えることもしたいとは思わない。
でも、なんでこんなにのめりこんでいたのかは考えたい。
珍しく、ひねくれたゲーマーの理屈を超えてきたゲームだった。

ゲームシステムが斬新だったから、キャラクターデザインが刺さりまくったから、ストーリーが意外性に満ちていたから、ドット絵の表現なのに懐古的とは程遠いものにチャレンジしていたから、世界と物語に寄り添う豊かな音があったから、気軽に遊べるボリュームだったから、ガチャが厳しいようで意外と優しかったから、手作り感ある生放送イベントに謎の実家感があったから。射幸心煽りまくりのガチャ演出があったから!

そして実に、熱量のあるゲームだったから!


全部自分の感想だけどだけどそれでいい。
でも最後までゾンビランドサガのキャラが復刻されないのはキレそうだよ……。これさえ復刻されていれば全キャラ所持の状態でこのゲームを終えられたのによう。ゾンビランドサガはサイゲームスのIPだからまだ復刻あるっしょハハハとか思ってて本当にすみませんでした。

あと、レティシアちゃんヒロインルートも欲しかったよおれは。誰が書いてくれ。


「来年も2月20日に渋谷に集まるか。一周忌。来年は展望台事前に予約しよう」

「また仕事休むのかよ、それもうアホでしょ」

「来年の2月20日は木曜らしい」

 

ワールドフリッパーから逃げるな。