本日、おれたちの『ワールドフリッパー』に、(おそらく)この夏の最後の限定キャラである”浴衣ネフティム”が実装された。水着限定ガチャ×3回から『涼宮ハルヒの憂鬱』コラボ、そしていよいよ浴衣。思えば遠いとこまで来たもんだ。
おれはこのガチャ画面を見た瞬間、思わず目から時の涙を零した。ネフティムは、なんか古代遺跡みたいなところで眠っていたところを主人公たちに起こされた美少女戦闘兵器で、出会ったばっかりの頃は「命令を……。命令がないと何をしていいかわからないの……」みたいな綾波レイ的存在だったのが、今はどうだ。浴衣を身にまとい、恥ずかしそうではあるが、自分の意思を感じさせる笑顔をこちらに向けているではないか。もう、ネフティムは、命令を待つだけの戦闘兵器ではなくなったのだ。おれが……おれがネフティムを夏祭りに連れていかなければならない。
ガチャガチャガチャガチャガチャキンコンカーン。
おれたちは何度もすれ違った。光の玉が舞う空の下で。
ピックアップをすり抜け絶望した夜もあった。
でも、おれは諦めない……。キミを夏祭りに連れていくために。
何度だって、何度だってやりなおすさ。
ババババババーン!70連くらいでキター!!!!!!!!!!
ピックアップをすり抜けてノーマルネフティムが来たときは”流れ”の悪さを感じたが、一度アプリを落とし邪気を払ったのが良かったのかもしれない。
ガチャに必要なのは、愛だ。
残暑に彩りを添える浴衣に、左手に綿あめと巾着。右手にはなんかよくわからないけどお祭り感のある袋。左下にイカ焼きにチョコバナナ。頭にお面。そしてちょっと恥ずかしそうなネフティムの表情がマッチし、さながら夏の化身である。その姿を見ると、彼女と出会った頃のことが頭の中をかけめぐっていく。
君が目覚めたばかりの頃、君は命令を求めていたよね。
でも、僕は、君にできる命令なんて持ち合わせていなくて、ただ友達になりたかったんだ。
サービス開始から半年、ハーフアニバーサリーとかいう謎の祝い事で、限定キャラになったこともあったよね……。あのときの君は、出演依頼を受けて、その大役を全うしようと頑張ってくれたよね。スケジュールに忙殺される君を見て、その強すぎる責任感が君を苦しめているんじゃないかと心配したこともあったよ。
でもいま君は、「すこぶる楽しい」と心の底から笑顔を見せてくれる。
君と夏祭りに来れて、本当に良かった。
ありがとうサイゲームス、ありがとうシテイル。
もうこれで夏の限定キャラは最後なんですよね。
おれはネフティムとの新しい日々の始まりを、ワーフリ団のLINEに貼り付けた。”まさか、夏祭りに行かんやつおる?”というメッセージとともに。
「おい、おめえ」
夢心地にあったおれを、スマホのメッセージ受信音が現実に引き戻す。
「ハイ」
「限定キャラは浴衣ネフティム一人じゃないんだが?浴衣ネフティムの後ろにいる”漢”から目を背けるな」
「誠に申し訳ありませんでした」
『ワールドフリッパー』から逃げるな。